main 01

佐藤:
フィギュアに生きているような自然な動きをつけるのは難しいんだよね。 たとえば魚。泳いでいるように見せるためには、まず台座から浮かせないといけない。 透明の支柱を使って浮かせて、泳いでいるように見せる方法もあるんだけど、自然じゃないからそれはやりたくない。
古屋:
見栄えがよくないからね。
佐藤:
だから、支柱を使わずに見栄えがいいポーズを考える。そこから動きをつけていく。 ここで一つポイントがあって、実は実際の動きより、ちょっとだけ大きな動き方に してるんだよ。そのほうがダイナミックで見ごたえのある立体になるから。 ただね、原型師さんはそういうのを嫌がるんだよね。

02

古屋:
そうなんだ。
佐藤:
「不自然。そんなに魚のヒレは曲がらない」って。
古屋:
なるほどね。でも、大げさな動きのほうが自然に見えるのか。
佐藤:
そう。だから、少しだけ味付けが必要。まあ、意見がマッチングしないことはよくあるよ。 原型師さんのやりたいことと、僕がほしいものが違うことはよくある。それが悩み。
古屋:
やる気を削いじゃうとね。
佐藤:
ノってもらいながら作業をしたほうがいいし。 そんなときは二人で絵を描いたり、粘土をこねたりして「ああしよう、こうしよう」って話してる。 あとは動きを大きくつけたと思ってたのに、小さかったときは困るね。 そうなるとつまらないから、もうちょっと修正しないといけないって言うんだけど。
古屋:
えー!ってなる。
佐藤:
かなりね(笑)。まあ、直すの面倒だから。時間がかかるし。 俺だけのこだわりになるからね。

03

古屋:
メインでやってもらってる原型師のKOWさんは、そういうのはどうなの?
佐藤:
メンタル的に俺と似てるから、えー!とはならない。
古屋:
そっか。そういえば、付き合い長いもんね。同じ大学だったっけ?
佐藤:
そう。同じ大学。学生時代から考えると20年弱の付き合いか。
古屋:
ゼミとか授業が一緒だったの?
佐藤:
いや。学年が一緒だっただけ。だから仲良くはなかった(笑)。 卒業してから、友達の結婚式でたまたま再会して、何してんの?って聞いたら「立体表現」、 まあ原型師みたいなことをしてるっていうから、ちょっとやってみないって話になって。 本格的に付き合い出したのは、それからだから、約10年・・・15年くらいか。
古屋:
作る物を気に入って?
佐藤:
そう。もうちょっとやろうよって話して。 KOWさんがいなかったら、 ここまでやってこれなかったと思うよ。
古屋:
想像しているものをカタチにできないもんね。
佐藤:
とくに生き物を作れる人って、そんなにいないから。
古屋:
確かに。KOWさんのほかにもいろんな原型師さんと仕事してるけど、爬虫類が得意でも四つ足の動物はダメとか、得手不得手があるからね。
佐藤:
だから、初めて一緒に仕事する原型師さんは、 これまでに何を作ってきたのかを見て、できそうなものをお願いする。 読みがハズレると後が大変になるからね。ただ、確率的には半々くらいかな。 やってみないとわからないところが多いし。最後の精度がつめきれないこともあるから 試しながらね。ひとつ決めていることは、納得いかないものは世の中に出さないことだけ。
古屋:
そういうやりとりで手を抜かないから、時間がかかるんだよね。

05

佐藤:
生産前のチェックは一番大変だよ。 デコレーションマスター(※1)を作ってね。ちょっと持ってくるよ。
バタバタバタ・・・。

06

佐藤:
これね。これで色味の違いとかチェックする。
古屋:
EP1(※2)って入ってるのが1回目か。(写真 クジラのヒレ部分) これにあわせて色を塗ってくださいって修正を頼むんだよね。
佐藤:
色もそうなんだけど、タンポ印刷のチェックも超重要。 曲面になっているボディに平らなハンコを押して色をつけるわけだから、単純に押しづらいよね。 色がズレてしまうこともあるし。
古屋:
だから微調整しながら、デコレーションマスターで何回もチェックが必要なんだよね。

07

佐藤:
ハンコを同じ場所に何度も押していくようなもんだから、整合性もつけないといけない。 まあ、普通はここまで細かくやらないよね。
古屋:
絶対ね。普通はここまで工程数はかけないよね。うちは生きたまんまの姿に近づけるから。
佐藤:
俺の作業の中だと、この指示出しと修正作業が一番大変だと思う。(※3)
古屋:
全部、手書きだしね。
佐藤:
Illustrator使えないからね(笑)。手書きのほうがわかりやすいし、思っていることを指示しやすいから。
古屋:
何回やりとりするんだっけ?
佐藤:
2、3回して、その後に中国の工場に2週間から1ヵ月くらい行く。 修正作業をチェックして、オッケーになるまでね。
古屋:
止める人がいないから、やり出すとキリがない。
佐藤:
うん(笑)。

08

古屋:
「もう行かないで!」って言ってるのにね(笑)。
佐藤:
コメントを入れたやりとりだけだと、まずクオリティが下がっちゃうから。実際に現場に行って「赤足して、青足して」って指示しないと。細かい微調整が必要なんだよ。 タンポになると押す位置まで指示するし。まあ、地獄のような感じ(笑)。
古屋:
ハマっちゃうと、土日もだもんね。
佐藤:
本当に辛いよ。納期に間にあうと思ってたのに、ズレてしまうこともあるし。 しかも一人でやってると気が滅入る。精神的にすごく追い込まれるし。 「なんでこんなことしてるんだろう」ってなるよ(笑)。

09

古屋:
最後のほうになると、毎回「会社やめたい」っていうよね(笑)。
佐藤:
そうそう(笑)。俺、やめるよってね。
古屋:
俺は、その言葉を毎回聞くのが、本当に辛いよ(涙)。
佐藤:
はは。ゴメンね(笑)。でも、作り出したら最後までこだわらないと。 みんなで作ってきたものが、ゴミのようになったら嫌だから。
古屋:
生き物ってキャラクターと違って腐らない。流行がないから、ずっと続けられる。 ただ、出来が悪いとダメ。リピートしてくれなくなるし。 いつの時代の人が買っても、素晴らしいと思えるもの。 自然と同じなんだよね。いつ見てもキレイじゃなきゃ。

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