コラム

【糞虫】汚いなんて言わないで!実は偉大な虫なんです ~「ころころゼンマイフンコロガシ」好評発売中~

11月末より「ころころゼンマイフンコロガシ」が好評発売中です~

発売以降、SNSなどでも「かわいい」「面白い」とのお声をいただいております。ありがとうございます!

知らなかったよ、という方はこちらをチェックしてくださいね。

 

 

フンが回転して前に進む、なんともシュールな動きがクセになる本商品ですが、そういえば本物のフンコロガシってどこで会えるんだろう……?

ふとそんなことを思い、フンコロガシに詳しい「ならまち糞虫館」館長の中村圭一さんにお話しを伺いました。

 

【教えてくれたのは……】

ならまち糞虫館 館長  中村圭一さん

1964年生まれ。NPO法人 自然体験活動推進協議会 自然体験活動指導者(NEAL)資格保有。NPO法人シニア自然大学校認定 自然観察アドバイザー。2016年に脱サラ後、経営コンサルタントとして中小企業の経営支援を行う傍ら、2018年に「ならまち糞虫館」をオープン。奈良に都ができて以来1300年続く美しい自然と、それを陰で支えてきた糞虫たちのことを子どもたちに届けるべく、糞虫観察ツアーや出張授業、メディア出演など幅広く活動している。

 

※一部、動物のフンなどを撮影した写真を掲載しております。苦手な方はご注意ください。

 

日本にいる糞虫は“フンコロガシ”ではない

———早速なのですが、フンコロガシって日本に存在するのでしょうか?

中村さん「結論から言うと、日本でフンコロガシに出会える機会はほとんどありません。アフリカや地中海沿岸などに広く生息しています。まず、コガネムシのなかでフンを食べるものを『糞虫』と呼ぶんですが、さらにそのなかでもフンを丸めて転がす習性を持つものを『フンコロガシ』と呼びます。日本では『ダイコクコガネ』というグループの5種類がフンを丸める習性を持っているものの、転がして運ぶことはなく、フンのすぐ下に穴を掘って地下室を作り、そこでフンを丸めるんです」

 

フンを丸めようとするゴホンダイコク(※写真に写っているのは糞虫が作った糞玉ではなく、まだ加工前の鹿のフン)。丸めたフンは自分で食べることはなく、そこに卵を産み、幼虫の食料になる。この写真は、中村さんが地下の巣穴を丁寧に掘り起こして撮影している。

 

———日本ではフンを転がす姿は見られないのですね……。では、糞虫はどういった場所で出会えるのでしょうか?

中村さん「動物のフンが常に供給され、土や草があれば糞虫もいる可能性が高いですね。コンクリートの多い地域は糞虫にとって住みづらい環境ですが、長年野良猫が住み着いている公園などであれば出会えるかもしれません」

 

奈良公園の美化を守る糞虫たち

———中村さんがお住まいの奈良はたくさんの鹿がいますし、糞虫にとっては食糧の宝庫ですね。

中村さん「奈良公園の鹿たちは毎日1トンのフンを排泄しますが、人間は一切掃除をしていないんですよ。それでも奈良公園がきれいに保たれているのは、糞虫がフンを分解してくれているから。糞虫は、鹿のフンに含まれる腸内壁のカスや腸内細菌といったものを餌として食べていて、彼らが分解して残った草の繊維質などは土に還ります」

 

鹿のフンに群がるオオセンチコガネ。糞虫がフンを分解することで、ハエの発生を抑え、自然循環を速めているそう。糞虫パワー恐るべし!(撮影:中村さん)

 

中学生の頃から糞虫に“夢中”

———中村さんは何がきっかけで糞虫にハマったんですか?

中村さん「私が中学2年生の頃、同級生に糞虫マニアがいたんですよ。その子に、美しいオオセンチコガネや、角が立派なダイコクコガネなどの標本を見せてもらったり、一緒に奈良公園に通ったりしているうちにのめり込んでいきました。カブトムシやクワガタムシと違って研究している人があまりおらず、資料も少なかったので、色々な発見があって面白かったですね」

 

———現代のようにネットで調べられないですしね……。特にお気に入りの糞虫は何ですか?

中村さん「これについては喋りだすとキリがないのですが……(笑)。1種挙げるなら、やはりゴホンダイコクコガネでしょうか。見た目がかっこいいのはもちろん、なかなか見つけにくいんですよ。他の糞虫は奈良公園に通い出してから次々に見つけられたのですが、ゴホンダイコクコガネは夜行性で、昼は巣穴に潜ってじっとしているんです。最初に見つけたときは『おーっ!』と感動したのを覚えています」

 

ゴホンダイコクコガネはオスのみ5本の角が生えている。この角はメスにモテるためにある飾りで、中村さん曰く「ゴホンダイコクコガネの角は、邪魔なものの最たる例」とのこと。(撮影:中村さん)

 

最後に、「ころころゼンマイフンコロガシ」で遊んだ感想もいただきました。

中村さん「糞虫館に並べたところ、多くの子どもが面白がって触っていました。フンコロガシについては、裏側までよく特徴が出ていて誰が見ても『フンコロガシだ!』というくらいの出来栄えですね。糞虫をみんなに知ってもらうという観点からも『ころころゼンマイフンコロガシ』を応援しています!」

 

糞虫館にも「ころころゼンマイフンコロガシ」を素敵に展示していただきました♪

 

中村さん、ありがとうございました!

 

もっと糞虫について知りたい方はこちらをチェック!

 

ならまち糞虫館

住所:奈良県奈良市南城戸町28-13(近鉄奈良駅から徒歩9分、JR奈良駅から徒歩15分)

営業時間:土・日曜日の午後1~6時

入場料:大人300円、子ども100円

HP:ならまち糞虫館

ブログ:むしむしブログ

 

たくましくて美しい糞虫図鑑(創元社)

中村 圭一 著,2021年